構造計算書はなぜあんなに厚い!?
「構造計算書はなぜあんなに大量の出力になるのか?」知人のSNSの投稿を見て、書かせていただきます。(ネタに困っていたのでちょうど良い!)
「構造計算書」という書類は、平気で1000枚、2000枚の印刷枚数になります。構造設計者はそれを確認申請の正副、適合性判定の正副、意匠設計者控え、自社の控えで少なくとも6部は印刷します。
部数の話は別件として、なぜ計算書はそんなたくさんの印刷をしなければならないのか?
「要らないとも言えない。減らせそうで、減らせない。」
というのが私なりの答えです(諸説あり)。
イマドキの構造計算は多くが構造計算プログラム(コンピューター)を使って行います。プログラムを使うことで、実際の建物を忠実に、より精確に、細部にわたって検証できる様になりました。手計算(電卓)では出来なかった(省略していた)細部の検討を設計条件を入れるだけで一瞬で検討し、複雑な構造や大規模の建物が容易に設計出来るようになりました。
構造計算書が厚くなる理由は、建物の検討を手計算よりは高度に、細部まで忠実に計算しているためです。柱脚のボルト1本、柱梁の継手1箇所というほとんどすべてを検討しているので、自ずとページ数が増えていってしまいます。
もう一つの構造計算書の目的として、計算した結果を証拠として残しておくという役目もあります。過去に起きた「耐震偽装事件」により構造計算適合性判定という制度ができました。これは第三者チェックと言われる、設計者、建築主事以外の第三者の構造専門家(適合性判定員)が計算内容をチェックする制度です。第三者の構造専門家が構造計算書を見ることで、その建物の強さを別の目でチェック、確認し、それにより建物の安全性は公に担保される事になります。
建物の構造設計は画一的な業務ではなく、複雑な建物形状を物理モデルとして計算するため、設計者それぞれの考え方や、安全性への配慮は様々です。第三者が計算内容をチェックするためには、設計者は設計したほぼすべての内容を出力して提出する必要があります。数値が許容値以内である事を確認するだけでなく、どの程度余裕度を持って設計しているのか?どの部分がこの建物の弱点なのか?構造の専門家は構造計算書の中身をみれば、設計者の考え方、設計方針を読み解く事ができるのです。
あんなに厚い計算書、どうせ見てないだろう!と思われるかもしれませんが、全く意味のないページはほとんどないのも事実です。検討していますよ!という意思表示と言った方が良いかもしれません。
私達、構造設計者が世の中にいなくなっても建物は残ります。残った建物の安全性を紙で残す事も我々構造設計者の責務としてご理解いただければと思います。
たまには出力範囲を減らそうと思うこともありますが、印刷枚数100枚増なら大差なし!と感覚が麻痺しているのも事実です。。。。
なんだか教科書的な見解のコラムになってしまいました。。。。
追伸
デジタルの時代ですから、紙で残さなくても。。。という意見には大賛成!だんだん弊社の書庫もボリュームが増してきました。。どこにしまおうかなぁ。。。
ちなみに、この写真両面印刷です。コピー用紙1冊500枚ですので、ほぼ2000ページですね。